ベビーシッターは「究極の保育園?!」現役保育士てぃ先生が体験したベビーシッターのお仕事
現役保育士がベビーシッターをしてみると……「純粋に楽しい!」
このイベントに先立ち、てぃ先生は実際に3軒のご家庭でベビーシッターを体験してきました。保育歴は10年以上のてぃ先生ですが、ベビーシッターのような自宅での個別保育は初体験とのことです。
シッティング後の率直な感想は「純粋に楽しかった!」というもの。特に普段、保育園ではなかなかできない、「個別の配慮」を思いっきり実践できたことが嬉しかったと語ります。
保育園では実現できないもう一つの保育
保育園は子どもにとって、お友達との関係性で育ちあえる良さがあります。遊具やおもちゃ、保育室などさまざまな環境が整い、自宅ではできない経験をすることもできます。
ただし、保育士の子どもへのかかわりという点で見ると、1人で複数の子どもを見なければいけない、というところで、どうしても時間や人数的な制限が出てしまうもの。時には、個人よりも集団や全体の「流れ」を優先しないといけないこともあります。
「例えばある子どもが、ブロック遊びにものすごく集中している時、保育士としてその子の育ちを考えると、しばらくじっくり遊びに取り組ませてあげたいけれど、保育園全体の流れを考えると、そうさせてあげられないことも多いんです」
ベビーシッターだからこそできる「個別の配慮」と「究極の保育園」
その一方で、保育士が自宅で行うベビーシッターでは、子どもの希望や、要望を十分に聞いてあげてかかわることができます。
「ベビーシッターの個別保育では、個別の配慮が制限なくできるというのが、いいところですよね。けして子どものワガママ放題に付き合うということではなくて、その子の自己肯定観を育んであげるために、保育士側が待ってあげられるというのが必要なことだと思います。シッターってある意味、究極の保育園かもしれません」
普段は保育園で複数の子どもたちに向けている視点を、一人の子どもに集中できることは保育士として大きなやりがいにつながるようです。てぃ先生の「究極の保育園」という言葉には、「保育士も子どもも幸福」という個別保育の良さが表れているのかもしれません。
ベビーシッターならではの「保育の違い」とは
ところで、保育園の保育と、ベビーシッターの保育では、その実際の保育内容に違いはあるのでしょうか。てぃ先生は、ほとんど違いはないと語ります。
「もちろん子どもの生命や安全を守るということは前提にありますが、これは保育園でも同じ気持ちで取り組んでいますよね。保育の中身というところでも、違いはありません。普段、保育園でやっていることを、一人の子どもに合わせて提供する、というイメージです」
てぃ先生がベビーシッターで重視したもの
今回、てぃ先生がベビーシッター前の面談で重視したのは、ご家庭の方針を理解するとともに、預かるお子さんの性格や好きなものを把握することだったといいます。
「テレビを見せる・見せないとか、おもちゃのお片付けなどの基本的な方針の確認以外に、その子の得意なことや、好きなこともヒアリングしました。短い時間でなるべく早く打ち解けていきたかったんです」
例えば今回シッティングしたあるご家庭では、4歳児、1歳児の姉妹さんのケースがありました。
「お子さんも一緒に面談したのですが、どこの家庭でも、上の兄妹って、自分自身が甘えたい時でも、お兄ちゃん・お姉ちゃんとしての役割を果たそう、ってガマンしていたりするんですよね。だから、まだ1歳児の下の妹さんの安全に配慮して過ごすことはもちろんのことですが、今日は特に上のお姉ちゃんにしっかりとかかわる保育をしようと思いました」
このお姉ちゃんの得意な遊びでたっぷりかかわったことで、「普段は保育園でも人見知りするのに、10分ぐらいでなついていて驚きました」と親御さんも話すぐらい、すぐに打ち解けて、楽しい時間を過ごせた様子。最後はお姉さんも「バイバイしたくない」と涙で分かれるシーンもあったそうです。
子育ての専門家として社会の役に立つ
ベビーシッターには、保育園の先生やママ友、祖父母ともちょっと違う立場から、アドバイスできる「子育ての専門家」として期待されることもあるようです。
「例えば、他人の『まねっこ』ばかりするお子さんに悩んでいる親御さんがいました。保育士からすると、みんなそういう時期ありますよ、って分かっていることでも、親御さんからすると不安なことってあるんですよね。『大丈夫ですよ~、誰にもある時期ですし、もしかしたらマネをしている相手が憧れの対象なのかもしれませんね』とお伝えしたら、安心されていました」
子育てのプロとして、保護者や社会の役に立てることもベビーシッターの魅力のようです。
「家が保育園になる」ベビーシッターは、親も子どもも、保育士も嬉しい
遊びのプロでもある保育士が、マンツーマンで向き合ってくれるベビーシッターは親のためだけではなく、子どもにとっても嬉しいものだといいます。
「お子さんにとっては、専門性ある有資格者に思いっきり遊んでもらえるというのは、特別な時間だと思います。まさに、家が保育園になるんですよね」
また、こうしたシッティングを通して、保育士の専門性が社会に広がることも見逃せません。
「僕たち保育士が、遊びを綿密に計画して、意図をもって遊びの中から子どもを育てている専門性ってあまり世間に知られていませんよね。こうした専門性を活かしつつ働けて、親の方に知ってもらえるいい機会になると思います」
会場からのご質問 「家庭の方針と保育観が大きく違うときはどうする?」
会場からは、現役の保育士さんならではの鋭い質問もありました。
「もしもご家庭のルールと、自分自身の保育観が大きく異なり、納得できないときはどうすればいいでしょうか?」
例えば家庭の方針で「食べ残しは絶対にさせないでください」など、保育士個人としての考えと大きく異なる場合です。てぃ先生は、こうした方針については、まず事前の面談でしっかり確認し、基本的には尊重することが大切だといいます。
「保育園は、それぞれの保育園のねらいとか『こういう子どもを育てたい』といったような目的で動いていますよね。それと同じように、ご家庭には、ご家庭のルールがあるんですよね。これはなるべく尊重するべきだと思っています。それが自分の価値観と違う時も頭ごなしに否定するのではなく、こういうやり方もあるみたいですよー、と情報提供するぐらいのスタンスで臨むのがよいのではないでしょうか」
とはいえ、どうしても納得や共感できない場合は、また別のご家庭を選ぶことができるのも、ベビーシッターのよいところ。
「ベビーシッターは保育園の保育と違って、こちらも利用者を選ぶことができるんです。だから、あまりに方針がかみ合わない場合、そこは無理せずに割り切ったほうが、保育士・ご家庭双方のためにもよいでしょうね」
保育の原点が詰まったベビーシッターに、ぜひ挑戦してみてください
最後にてぃ先生から、ベビーシッターに興味のある保育士さんたちに向け、メッセージを頂きました。
「僕の実体験でもそうなんですが、保育園に勤めて3年もしてくると、保育の中で、もっとこの子にかかわってあげたいな、でも時間や人数的なところもあるし難しいなぁ…というシーンが増えてくると思うんです。そこで、いろいろなお子さんに、個別に、間近に接することができるというベビーシッターには保育の原点が詰まっていると思います!だから、普段、保育園の保育の中で、もっとじっくり待ってあげたい、子どもの興味関心をもっと引き出してあげたい、と思っている保育士さんは、ぜひ一度ベビーシッターに挑戦してみてください。きっと、子どもを見る目が変わると思いますよ!」